みなさん、こんにちは。仙台税理士・公認会計士の伊藤宏平です。
前回の投稿からかな~り期間が空いてしまいました。
時間に追われるというのはよくないですね。
少しずつですが再開していきたいと考えていますので懲りずにどうぞお付き合いよろしくお願いいたします。
さて新年一発目は、昨年末に政府から公表された「平成30年度税制改正大綱」の中から1つ法人向けにお話していきます。
その1では、従来からあった「所得拡大促進税制」の改組のうち「中小企業に適用される部分に絞って」をお話していきます。
それでは、どうぞ。
~ストーリー~
伊藤宏平会計事務所で何やら伊藤所長が読書をしながらぶつぶつとひとり言を。そんな光景に新人の宮城くんが気になっています。ちょっと覗いてみましょう。
伊藤所長
安部内閣では、デフレ脱却と○×△☆♯♭●□▲★※生産性向上のための税制措置として持続的な賃上げを強力的に○×△☆♯♭●□▲★※
新人宮城くん
支倉部長!!さっきから所長が念仏のように何かごもごも呪文を唱えているんですけど・・・。どうしたんでしょうか?
支倉部長
ん?どれどれぇ~。あぁ~あれは、昨年末に政府から公表された税制改正大綱について情報のインプットをしているんだよ。
新人宮城くん
税制改正大綱?ですか?
支倉部長
そうそう。毎年年末に各種税制の改正について公表されるんだよ。政府の政策と税制はとても重要な関係があるからね。
新人宮城くん
へぇ~。そうなんですか。所長は、呪文を唱えている中で「生産性向上「賃上げ」と言っていたんですがどういうことですか?
支倉部長
うん。いい質問だね。どういう意味かというと今、安倍政権では、デフレ脱却に向けた政策をしているわけだけど、その中の柱の一つとして、「生産性革命」や「人づくり革命」なんてことを断行しているんだよ。それを達成するために税制上の優遇措置が従来から行われていたんだ。具体的に言うと法人で働く社員の賃金を増やした場合は、法人税の税額控除を受けることが可能なんだよ。これを「所得拡大促進税制」と言うんだよ。
新人宮城くん
支倉部長!!それって働く社員としては給与も上がるし法人としては税額控除を受けられるしWinWinじゃないですかぁ!!
支倉部長
そうだね。これが安倍政権が実現しようとしているデフレ脱却を目指すための税制における政策の一つなんだよ。実は、この税制優遇は既に適用されている税制なんだけど平成30年度税制改正大綱ではより利用しやすいように改組されているんだよ。簡単にホワイトボードに表を書いたから見てみようか。
【所得拡大促進税制】 | |||
従来の中小企業者-適用要件 | 改正後の中小企業者-適用要件 | ||
① | 適用時期 平成29年4月1日~平成30年3月31日 |
① | 適用時期 平成30年4月1日~平成33年3月31日 |
② | 青色申告法人であること | ② | 青色申告法人であること |
③ | 雇用者給与等支給増加額が「増加促進割合」が3%以上であること | ③ | 廃止 |
④ | 雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額以上であること | ④ | 廃止 |
⑤ | 平均給与等支給額(注1)が比較平均給与等支給額を超えること | ⑤ | 平均給与等支給額(注1)が比較平均給与等支給額の増加割合が「1.5%以上」 |
⑥ | 設立事業年度においても一定の要件を満たせば適用可能 | ⑥ | 設立事業年度においては適用不可 |
(注1) | (平均給与等支給額の算定上の留意) ~継続雇用者の定義~ 前期及び当期において一度でも給与等の支給がある国内雇用者が対象 |
(注1) | (平均給与等支給額の算定上の留意) ~継続雇用者の定義~ 前期及び当期の全期間の各月において給与等の支給がある雇用者で一定のものなお、継続雇用者がいない場合は、適用不可 |
↓要件を具備↓ | |||
従来の中小企業者-税額控除 | 改正後の中小企業者-税額控除 | ||
<控除額=原則(ア)+上乗せ控除額> <上乗せ控除額=(イ)> |
<控除額=原則(ア)> <以下(イ)の条件に該当する場合、 (ア)に代わって(イ)が控除額となる> |
||
(ア) | 雇用者給与等支給増加額×10% | (ア) | 雇用者給与等支給増加額×15% |
(イ) | (雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)×上乗せ控除率 | (イ) | 雇用者給与等支給増加額×25% |
- | (イ) 適用条件 |
・上記適用要件の⑤平均給与等支給額が比較平均給与等支給額の増加割合が「2.5%以上」
・次のいずれかの要件を満たす (2)経営力向上計画の認定+経営力向上が確実に行われるものとして証明されたこと |
|
税額控除の上限は、法人税額の20% |
新人宮城くん
ほぇ~!!適用するためには色んな要件が必要なんですね。
支倉部長
そうだね。会社の社長がこの制度をしっかり理解していれば法人としてもそして働いてくれている社員のみんなにも恩恵があるからね。こうした制度はしっかり社長に啓蒙してあげないといけないんだよ。だから所長も呪文のように唱えながらインプットしているんだよ。
新人宮城くん
支倉部長!!さっそく自分が担当している会社に適用できないか、適用できないとしても平成33年3月31日まで適用することができるので今後どうしていくか社長とお話してみたいと思います。行ってきまぁ~す!!
ガチャ キィー バタン (ドアが閉まる音)
支倉部長
ほぅほぅ。若いっていいのぉ~。
伊藤所長
あれ?二人して何を話してたんですか?
支倉部長
いえいえ。大したことじゃありませんよ。
伊藤所長
ふーんそうですか。ん?このホワイトボードに書いてあるのは、今まさに私がインプットしていた内容じゃないですか!これ支倉部長が?さすが支倉部長!勤勉ですねぇ~。
支倉部長
うぉっほん。まだまだ若い人たちには負けられませんよ!!
いかがでしたでしょうか?
従来から適用されていた「所得拡大促進税制」が平成30年度の税制改正で改組されてより中小企業者にとって利用しやすくなったともいわれています。適用要件の判定がやや複雑な部分はありますが、しっかり賃金台帳や各種情報を日頃から整理整頓されていれば判定することは可能です。
是非、自社に当てはめて該当していないか検討することをお勧めいたします。
仙台税理士・公認会計士の伊藤宏平でした。
それでは、また。