ブログBlog

2016年08月20日

【会社設立するなら知っててほしい】信用取引における債権の回収リスクに備えよう。

カテゴリー:
【会社設立するなら知っててほしい】信用取引における債権の回収リスクに備えよう。

みなさん、こんにちは。仙台税理士・公認会計士の伊藤宏平です。

さて、今日お話しするのは、事業を行っている上で、どうしても不可避な信用リスクに対する法人税法上のお話です。

 

【信用リスクに対する法人税法上の取扱い】

小売業のような現金商売であれば掛売がほぼほぼないので信用リスクは発生しません。

しかし、それ以外の業種の場合、現金商売ではなく掛売のような信用取引を行うのが一般的です。

掛売である場合、それぞれ取り決められた回収サイトに応じて入金されます。

しかし取引先の事業の良し悪しによっては、会社が倒産等したり経営状況が悪化したりなど回収ができない事象が生じることがあります。

こういった回収不能がになる可能性が生じた場合、以下の方法によって企業会計上および法人税法上処理することが認められています。

・貸倒引当金として処理

上記の方法で処理することとなります。それでは、これらについて説明していきます。

 

【税制改正により厳格化された貸倒引当金】

平成23年度の税制改正によって、平成24年4月1日から開始する事業年度から貸倒引当金制度そのものが廃止されました。

法人税法上、見積り項目である引当金については、むやみやたらと計上することにより課税所得を減少させることを防ぎたい趣旨があるようです。

ただし、すべての法人で廃止されるわけではありません。

<廃止対象法人>

資本金1億円超の法人が廃止の中心です。

<対象外法人>

1億円以下の法人である中小企業や金融保険業、リース取引を行っている法人のリース取引等については、従来通り貸倒引当金の繰入が可能です。

 

【貸倒引当金の取扱いとは?】

法人税法上、貸倒引当金を繰入計上する際の留意点は、以下の3つです。

  1. 貸倒引当金の繰入として損金算入が認められるためには、あらかじめ損金経理することが要件とされていること(法人税法52条①②)
  2. 損金の額に算入された貸倒引当金勘定の金額は、翌事業年度において益金の額に算入すること(法人税法52条⑩)
  3. 個別貸倒引当金と一括貸倒引当金とはそれぞれ別々に繰入限度額を計算すること。

<損金経理要件とは?>

あらかじめ損金経理することが要件とありますが、この意味はどういう意味でしょうか?

これは、企業会計を基に作成する損益計算書において貸倒引当金を費用として計上することが必要という意味です。

法人税法における申告書は、企業会計をベースに調整を加えて計算されるため企業会計で計上していることが必要となります。

<翌年度において益金の額に算入することとは?>

益金の額に算入するとは、貸倒引当金の洗替処理を行うことという意味です。

(前期)

貸倒引当金繰入 100 貸倒引当金 100

(当期)

貸倒引当金 100 貸倒引当金戻入 100 ←益金

貸倒引当金繰入 100 貸倒引当金 100

<個別貸倒引当金と一括貸倒引当金とは?>

個別貸倒引当金とは、金銭債権から個別に債権を抜き出して計算する方法です。

金銭債権の中には、A社、B社、C社という具合に複数の個別の取引先の債権があります。このうち、個別の相手先の債権に対して個別に計算する方法です。

一方の一括貸倒引当金とは、金銭債権全体に対して貸倒引当金を計上する方法です。

 

【個別貸倒引当金の見積り方法】

個別引当金を計上するためには次の3つの事由によって引当金を見込める状況があるか否かが論点となります。

  1. 法的な事由
  2. 実質的な事由
  3. 形式的な事由

<1.法的な事由とは?>

これは、簡単です。法的な決定があるかどうかが判断基準となります。

例えば、会社更生法等による更生計画認可の決定、民事再生法による再生計画認可の決定、会社法による特別清算にかかる協定の認可の決定などとなります。

では、具体的な引当金の計算方法ですが以下の通りです。

回収不能見込額 = 対象となる 金銭債権 特定事由が生じた事業年度終了の日から5年を経過する日までに弁済される予定となっている金額 担保権の実行等によって取立等の見込みがあると認められる金額

 

<2.実質的な事由とは?>

これは、法的な事由には至っていないが実質的に同程度の状況にある状態をいいます。

すなわち、債務超過の状況が相当期間継続し、かつ事業が将来的に好転する見通しがない状況などがあるため債務者から債権を回収することが実質的に困難な状況をです。

察しの良い方であれば、お分かりだと思いますが、法的な事由のように明らかに回収が見込めない状況に至っているかどうかについては、判断が必要であるため中々、引当金を計上することは

難しいとされています。ただし全くダメというわけではなく、実質的に回収ができない状況について、合理的な根拠を示しさえすればよいでしょう。

この場合の引当金の計算方法ですが以下の通りです。

回収不能見込額 = 対象となる 金銭債権 担保権の実行等によって取立等の見込みがあると認められる金額

 

<3.形式的な事由とは?>

これは、法的な事由になる前段階の状況です。

(1)更生手続開始の申し立て

(2)再生手続開始の申し立て

(3)破産手続開始の申し立て

(4)特別清算開始の申し立て

(5)手形交換所による取引停止処分

これらの事象については、債務者が上記の法的手続きを開始申し立てすることにより要件を満たすため実質的な事由と比べてすることは難しくはありません。

この場合の引当金の計算方法ですが以下の通りです。

回収不能見込額=(対象となる金銭債権-債務者から受け入れた金額があるため実質的に債権とは認められない金額-担保権の実行等によって取立見込みがあると認められる金額)✖50%

【一括貸倒引当金の見積り方法】

こちらは、個別貸倒引当金と比べて簡単です。

事業年度終了時の売掛金や貸付金などの債権に対して、過去3年間の貸倒れの割合を乗じた金額となります。

具体的な計算方法は原則以下の通りです。ただし、資本金1億円以下の中小企業等については特例があります。

原則:繰入限度額=その事業年度終了時の売掛金、貸付金等の債権の帳簿価額の合計額 ✖ 貸倒実績率(※1)

特例:繰入限度額=(その事業年度終了時の売掛金、貸付金等の債権の帳簿価額の合計額-実質的に債権とは認められないものの額(※2)) ✖ 法定繰入率(※3)

 

(※1)貸倒実績率

貸倒実績率 その事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度の売掛債権等の貸倒損失の額+個別評価分の引当金繰入額-個別評価分の引当金戻入額 12
左の各事業年度の合計数
その事業年度開始の日前3年以内に開始した各事業年度終了の時における一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額 左の各事業年度の合計数

 

(※2)実質的に債権とは認められないものの額

実質的に債権とみられないものの額 当期末の一括評価金銭債権の額 平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始した各事業年度末における実質的に債権とみられないものの額
平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始した各事業年度末における一括評価金銭債権の合計

 

(※3)

法定繰入率

  • 卸売及び小売業 10/1000
  • 製造業        8/1000
  • 金融及び保険業    3/1000
  • 割賦小売業等  13/1000
  • その他        6/1000

 

ここで2つほど留意点があります。

  1. 個別貸倒引当金の対象となった債権は含めないこと
  2. 一括貸倒引当金の債権の範囲は、個別貸倒引当金の債権の範囲より狭いこと

上記1.については、当然ですよね?というのは、個別貸倒引当金の対象となった債権まで含めてしまうと対象債権を二重に含めてしまうためで引当金が過大となるためです。

上記2.については、一括評価金銭債権は、売掛金、貸付金その他これらに類する債権が含まれます(法人税法52条2項)。

敷金、保証金、預け金や一時的な仮払金立替金などは含まれません(法人税法基本通達11-2-18)。

一方、個別評価金銭債権はには概ね含まれることとなります(法人税法基本通達11-2-3)。

 

【まとめ】

いかがでしたでしょうか?

保有する債権の状況に応じて、次の取扱いをすることが必要でした。

①一括評価金銭債権全体に対して貸倒引当金を計上する。

②個別金銭債権について個別に貸倒引当金を計上する。

③①と②を計上するためには、企業会計を基に作成するの損益計算書において「損益経理」する。

以上のステップで処理することが必要となります。

信用取引であるためどうしても不可避なものとなりますが可能な限り取引をする前段階で信用リスクが高くないか

調査することがそもそもの貸倒引当金を計上しないために必要な対応でもあります。取引する際は、是非ともこれらについてご留意してください。

【編集後記】

連日、リオのオリンピックを見ていますが、年を重ねてきて段々と涙腺が弱くなってきています。

バトミントンの松友、高橋ペアの金メダルおめでとうございます。

彼女たちは、宮城県仙台市にあるウルスラ高校出身のようです。

素晴らしいです。仙台の誇りですね。

そして、男子400Mリレーについては、前回のオリンピックに続き2大会連続のメダル。それも銀メダルですよ!!

これってやっぱり日本人のチームワークがあっての結果なんでしょうね。まだまだ競技が終わっていない種目もあるのでベストを尽くしてほしいです。

会社を仙台で設立するなら税理士・公認会計士の伊藤宏平にお任せください。

それでは、また。